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氷魔法使いは、動揺を隠しもせずに、
「一体、何をした!?」
「ひれ伏せと言うておるのに。不敬な奴らじゃ」
クロエが僕を地面へ降ろすと、氷魔法使いは眉間にしわを寄せながら、
「……そうか、治癒魔法だけじゃなかったのね。強化魔法も……」
どうにも、クロエが自身で己の身体を強化したと解釈したらしい。
それは困るな。
そう思うとすぐに、クロエは軌道修正の弁を走らせる。
「的外れじゃのう。我はなーんにもしとらんぞ。のう、我が王よ」
得意げな顔で、クロエは僕にウインクする。僕はニヤリと笑い返す。
心が通っているおかげで、こうもやりやすいとは。
「……そうだ。この変貌は、僕がやったことなのだから」
僕は、臆せず、さも当然のように嘘を吐く。
氷魔法使いは、顔をしかめ、
「……ッ、つまり、この、『身体を強化』するのがあんたの能力……! なら、なんで始めっから……」
そう結論を急ぐ。
まぁ、ゆっくり、しっかり騙されておくれ。
クロエが手で顔を覆い、嗤う。
「クックックッ、フハハハ、アーッハッハッハッハッ! 我が王を舐めるでないぞ、三下めが。我が王が、一つの能力程度で埋まる器なものか」
否定の言葉は、クロエが放つ。そうすることで、その言葉には、僕が言うよりも強い説得力が籠る。
「……滑稽なものだ。さんざん、知る機会はくれてやったというのに」
追撃の僕の言葉。それで、氷魔法使いの瞳が揺れる。
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