『ムゲン王と呼ばれた男』

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「……おかしいとは、思わなかったか? 一度霜に触れてやったろう? 顔だって、見せてやったろう? 大げさに、痛がってあげたろう? そもそも『マインドクエイク』を一度見せてやったのに、その能力が嘘と思い込むなんて、てんでおかしいな」 ちらりと、氷魔法使いの後ろで固まっているパイロキネシスに目を向けると、彼の身体はビクリと跳ねる。そして、 「……舐めた目で、俺を、見てんじゃねええええええ!!!」 身体を強張らせ、火花を散らす。炎の渦が、僕とクロエに向かって迫る。 しかし、その炎はクロエが腕を一振りすると、跡形もなく消え去った。 「ふぅ、ぬるい風じゃ。汗もかけんのう」 「なっ……!? なら……!」 「クロエ」 「うむ」 僕がクロエの名を呼ぶよりも早く、クロエは行動を開始していた。クロエが指を鳴らすと、パイロキネシスを包むように黒い膜が張る。 「あっ、づぅう!?」 彼が纏う炎は、その膜に触れるとでたらめに跳ねまわり、彼を襲う。たまらず、彼は炎を生み出すのをやめた。 「我が王の言葉を邪魔させるわけにはいかんからのう。静粛にしてもらおう。それにしても、我がバリアの性能がこうも上がるとは……素晴らしい……」 ほぅ……と恍惚のため息を漏らすクロエ。 そんなクロエの姿を見て、氷魔法使いは一歩後退りながら、 「……で、でも、あんたは、ハッタリで戦うって……!」 「……そりゃあ、キミが聞いていたからね」 「そんな、気付いてた……!?」 いいや。気付いてなかったさ。でも、気付いてたことに、捻じ曲げる。 「……キミが聞いていたから、僕は芝居を打った。キミたちに油断してもらうため」 いや、これは駄目だな。 「ではなく、そう、キミたちの鼻を折ってやろうと思ってね」 「クックック、我が王は悪戯好きで、可愛いのう」 すかさずクロエが追従する。急な方針変更も、心が通えばなんのその、だ。
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