『ムゲン王と呼ばれた男』

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僕は氷魔法使いの言葉を無視し、 「そして二に、僕の能力『ペイン・ギフト』で、キミの氷の刃で受けた痛みを、増幅させた」 「痛みを、増幅……? だから、あんなに大袈裟に痛がって……。いや、でも、なんでそんなことを」 「くふっ、くふふふふふ」 クロエが口に手を当て笑う。魂に言葉が現れる。 痛いのも能力の所為にするでない。 うるさい。これも作戦だ。 わかっとるわかっとる。でも、くふふふっ……。 クロエは面白くて仕方が無いらしい。でも、痛がりな奴なんて怖がられて貰えないだろう。回りくどくても、理由付けは必要だ。 疑問を口に出しかけていた氷魔法使いは、クロエは見つめ固まっていた。クロエの笑い声が、不気味な物に見えでもしたのだろう。 クロエが失礼な奴じゃ、と鼻を鳴らすのを尻目に、僕は話を進める。 「そしてその三に。能力『痛みの祝福』を使った。これは、僕が受けた痛みを力に変え、他者に譲渡する能力。『ペイン・ギフト』で、声が出るほど痛みを増幅させたのも、こいつの布石に過ぎない」 くふふふっ。 声に出さなかっただけ良しとしよう。 僕はそう思い、苦笑する。 それを見た氷魔法使いが、ビクリと身体を跳ねさせ、腕で壁を作る。 僕の笑顔はそれほど嫌なのかい。 ならば、それも使うまで。 僕は薄く笑いながら、 「……どうだった? 怯える獣を狩る気持ちは。楽しかったろう。気分が高揚したろう。気が大きくなったろう。パイロキネシスよ」 黒い膜に覆われ、息を荒くさせながら僕を無言でじっと睨む彼に声を掛ける。 いや、無言ではないらしい。口がせわしなく動き続けている。どうやら、あの膜は音すら遮断しているらしい。 クロエ、僕の声は彼に聞こえているのか? 問題ない。聞こえぬのは五月蠅い彼奴の声だけじゃ。 なら良し。続けよう。
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