『ムゲン王と呼ばれた男』

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「……あいにく、クロエにとってキミの声は煩わしいらしい。キミの声はこちらまで届いていない。そのまま、静かに、檻の中の獣でいるといい」 パイロキネシスが、何かを叫びながら膜を殴りつけ、弾かれる。そして、手を握り転がり回っている。 見ると、膜を殴りつけたこぶしが、爛れていた。 ……恐ろしいバリアを張るものだ。 我に下劣な誘いをした報いじゃ。そら、さらに怖がらせてやろう。 クロエが腕を軽く振ると、黒い膜がずずずず、と縮こまり、彼に迫る。 彼は恐らく絶叫しながら、必死に身体を縮こませる。 黒い膜は、丸くなった彼に触れる寸前で動きを止めた。 「そうら、獣に相応しい恰好じゃ。そのまま、伏せておけ」 クロエが残虐な笑みと共にそう言い捨て、彼から目を離し、僕に視線で促す。 心で通じておるから、こんな動作いらんのじゃがの。あの氷魔法使いにもわかりやすくしてやろうではないか。くふふっ。 「……これで、クロエの溜飲も少しは下がっただろう。それじゃあ」 僕がこれからどう繋げるか、そう思いながら舌で唇を湿らせると、 氷魔法使いが、頭を抱え、呻く。 「ちょっ……ちょっと、待ってよ! なんであんた、そんないくつも、能力持ってんのよ……!」 あちらから、説明を求められる。 なら、出来る限りの虚偽と共に答えてあげよう。 僕はこれからの展開を頭の中でいくつも考えながら、言葉を進める。
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