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「……キミだって、いくつも魔法を使えるだろう?」
「アタシは、魔法を使えるだけよ! 魔法を数種類使えるだけ! あんたは、呪術と、他の能力を併用してるじゃない! そんなの、おかしいわよ……! あんたは何を持ってんの!? マナ!? 魔力!? 魔素!? どれだって、あんたの能力は説明が付かない……! そんなの、あり得ない……!」
あり得ないそうだ。そうだろう。嘘だもの。
しかし、彼女はそれを嘘と言いきれない。惑いの中にいる。
ならば、さらに霧の中へ誘うまで。
「あり得ない……? なら、この現状は何だ。今までの僕の語りが嘘ならば、何故キミたちは僕たちに追い詰められている」
「そ、れは……」
氷魔法使いの声が震えている。たちが悪いことに、クロエが突如としてパワーアップしたことは事実なのだ。それが、彼女の心に楔を打つ。
僕の言葉が、本当なのではないのかと。ハッタリなどでは、ないのではないかと。
「……なぁ、氷魔法使い。今キミは、僕の言葉を疑っているのだろう」
ある程度のルートが頭に出来た。そちらの誘導する、誘蛾灯を灯してやる。
「……何か裏が、もしくはトリックがあるのだと……」
氷魔法使いは僕の言葉に誘われてしまう。
「……そっ、そうよ、そうよ。だって、あり得ないもの! そんな、いくつもいくつも、別種類の能力があるなんて!」
氷魔法使いは頬をひくひくと痙攣させながら、
「アタシはそんなの知らない! 今までそんなの見たことない! 聞いたことも……! そんな狡い奴がいていいはずが……」
「狡いなんて、酷い言い草だ……。僕を否定しないで欲しいな」
そろそろか。希望を見せて、落としてやろう。
怖がらせるには、これが常套手段だ。よくやられたものだから、知っている。
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