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「多重能力者はいない。それはキミの思い込みだ。知識不足というものだ。現に、僕がここにいる。呪術だ、魔術だ、そんなカテゴリーを分けるのも面倒なほど、能力を抱えた僕が、今キミの目の前にいるじゃないか」
氷魔法使いが、わなわなと身体を振るわせながら、恐る恐る尋ねた。
「…………あ、んた……。いくつ、能力を持ってるの……?」
否定の言葉は出せなくなったようだ。
嘘は、彼女の中で真実に昇華した。
ならば、ここから僕が語る言葉も、全て真になるだろう。
「……さぁ、数えたことはないな。数え切れないから。数字という概念が、足りないもので」
氷魔法使いの息が、可哀想なくらいに浅くなる。そして汗に塗れている。氷が溶けてしまったようだ。
「……だから僕は、僕の能力群にある名前を付けている。教えてあげよう。能力自慢は、楽しいものだからな」
僕は笑い、頭の中で考える。恥ずかしい口上を紡ぎ出そう。
なに、問題は無い。
それが僕の力となる。
「さぁ、聞くが良い。僕という絶望を」
クロエがバサリと翼を翻し、僕の右斜め後ろで膝を折る。そして、翼を地面と水平に伸ばし、制止させる。
僕はそこに腰を下ろし、大仰に足を組む。
悠然と両手を膝の上へ。
まるで、玉座に座る、王のように。
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