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「無理やりだなんて、キミの主観さ。本当に、無理やりだったら、僕はここでこんなことは言いやしない。キミの『諦めよう』という言葉に、これ幸いと飛びついていただろう」
だけど僕は、その言葉を拒絶した。
「そして、無い頭を振り絞って、キミと作戦会議なんてやってない」
素人考えもいいところの、拙い作戦しか思いつきはしないのに。それでも、僕は考えていたじゃないか。負けてもいいと思うやつが、するものか。
「キミがパイロキネシスに絡まれていたことを言い訳にしてまで、キミと同盟を組もうとなんてしない」
「……へ?」
クロエは疑問符を顔に出す。言葉足らずか。そうだろうな。こういうことを言うのは恥ずかしいものなんだが。でも、言おう。今の僕なら言えるだろう。
「……僕は、始めっから、キミに同盟に誘われた時から、嬉しかった。同盟に入りたいと思った。だけど、誘われることが、好意に触れることが、恥ずかしくって。怖くって。誤魔化してしまった。言い訳をしてしまった」
もしあの場面を、小説の地の文にでもしようものなら、とても不親切なものになるだろう。嘘ばかりのモノローグ、天邪鬼な語り部。読者は、混乱してしまうこと必至だろう。
だけど。
そんな僕を、そんな『嘘吐き』な僕を乗り越えてまで、『本音』の僕は今ここに来ているんだ。
「だから、あの時、二度目のパイロキネシスとキミの衝突の時、キミを庇いたい。それだけでキミと同盟を組んでいるといったわけじゃない。一度断ってしまった、キミと……ど、同盟を組む、理由に使ったんだ。恥ずかし、ながら」
恥ずかしさで少し声が上ずってしまった。息を整え、何か言われてしまう話を進めてしまう。
「……クロエ。キミが、この戦場に入る前、扉の前で、『ま、ナミヒトがそこまで言ってくれてるのじゃ。我も頑張るかの』と言った時、僕が何か言っただろう」
「う、うむ……。しかし、それは無意識じゃったと……」
「それは嘘だ。本当は分かっていた。でもあの時の僕は、言えなかった。恥ずかしくて……」
「恥ずかしくて言えないようなことなんて、何を言ったのじゃ……?」
「……あの時の僕は『記念受験じゃないんだぞ』と、言ったんだ」
「記念、受験?」
……これは、記念受験という言葉の意味から分かっていないのかもしれない。
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