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「今言っただろう? 僕は、勝ちたいんだ。勝ちたくて、勝ちたくて仕方ない。キミが頼んだからとか、成り行きだからとか、そんな言い訳なんてなく、勝ちたいんだ」
僕は自分の胸に手を当て、ギュウと押さえつけ、服を握りしめる。溢れる感情をギュウと抑えつける。
「だって、こんなワクワクする戦いあるもんか……! 異能が集まる戦い、誰も経験したこともないような戦いだ……。これで、勝てたら、頂点に立てたら、どれだけ誇らしいか……気持ちが良いか……! なんの力も無い、ただの人間の僕が、勝てたら、どれほど痛快か……! 勝てる見込みなんて、万に一つもないくせに、思ってしまう……。焦がれてしまう……!」
勝ちたい。
「だから、キミが『無理やり』僕をここへ連れてきたなんて勘違いだ。むしろ、僕がこれから無理を言うくらいだぞ……! 僕は勝ちたくて仕方がない。でも一人で勝てる可能性なんて、万に一つもありはしない。だから、キミがいないとダメなんだ……! キミを頼らないと、勝てないんだ……!」
勝ちたい。
「だから、諦めないでくれ……! キミだって、勝ちたいと言ったじゃないか……! こんな僕が味方で、不安なのは、分かるけど。それでも、そんな、ふがいない僕ですら、まだ諦めていないんだ……! まだ勝つつもりなんだ……! 死んでも勝ちたいんだ……!」
勝ちたい。
「……僕の言葉は、薄っぺらく聞こえるかもしれない……。でも、キミは魂を見ることができるのだろう? なら、見てくれ。キミが綺麗と褒めた魂は、どうなっている。今僕が言ったことに、嘘偽りは一つでもあるか?」
勝ちたい。
勝ちたい!
勝ちたい!!!
勝ちたい!!!!!
「もうよい、そんなに勝ちたいと連呼せんでも十分見えておる」
クロエは笑って、
「……すまんの、途中からナミヒトの魂を見ておった。というより、目を奪われておった」
手を伸ばし、僕の頬を撫で、目元を拭う。どうやら、抑えきれなかった感情は目から零れていたらしい。
「……なんとも、美しい魂じゃ。黒い、陰鬱とした表層が、白く燃えるような輝きを包んでおる。そして、輝きは、黒い表層を通すことによって、闇色の輝きと成っておる。幾重もの恨み辛み、それすらも糧に輝きは増しておる。……うむ、始めて見た時より、綺麗じゃ」
クロエは僕の胸のあたりを見つめている。きっと、そこに僕の魂があるのだろう。
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