其の一

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カバンの中を見てみると、傘が入っていた。 昨夜、母ちゃんが雨が降ると言っていたな。 だから、父ちゃんが入れてくれたんだ。 父ちゃん、ありがとうと心の中で感謝する。 放課後、やれやれ今日も終わったかと、外をみれば ポツポツと雨が降ってきた。 母ちゃん、当たったなと思い、帰り支度をしていると 隣のクラスの耕平が、そそくさとやって来て、 耳打ちをしてきたではないか。 「観月、雨降ってるから、カラオケいかね、 美紀ちゃん誘って!」と小さい声で言ってきた。 日頃何かと世話になってる耕平君のためにも ここは、是非とも一肌俺が脱いでやろう。 『田中、カラオケ行かね!猫田も行くから行こう!』 と言い、猫田の方に顔を向け、お前は行くよなと念を送る。 すると、猫田はギョとして、 「ああたしも行くから、美紀ちゃん行こう!」 と言い、愛想笑いをする。 猫田、犬山、烏丸、島梟たちは、俺の言う事を実に忠実に聞く。 なんでだろう。
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