遠くて、近い

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「大丈夫、誰にも言うつもりないよ。何のメリットもないし。学校もしばらく来なくていいってさ。停学とける頃には、みんな受験でそれどころじゃないだろうしね」  河西は爪をいじりながら、鼻で笑うような口調で話す。同級生たちが競いあってする例の経験だけじゃない経験を積んだ、大人の顔。まだ済ませてない子ともう済ませた子の間の壁よりも、もっと厚い壁がここには存在している。 「……ちゃんと付き合ってたつもりだったんだよ。少なくとも、私は本気だった。この秘密の共犯者だって思ってた。なのに十八歳未満なら、私が被害者で向こうだけが加害者になるって、おかしくない?」  素直に頷こうとして、はっとして。伸生の顔がよぎった。
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