34人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱそうなんだ」
「何が?」
「ごめん、カマかけた。前にコンビニで見て、もしかしてそうかな? って思ったからさあ。夏だからって、髪の毛生乾きで彼氏と出歩かない方がいいよ」
尚紀が膝と頭がくっつくほどに項垂れて絶望していると、ごめんねごめんねと、背中をさすってくれた。
「奥さんに勝つ自信、どれくらいあった?」
「……もう忘れちゃった」
バスが来て、じゃあねってお互いに小さく手を振り合う。
「あんたも大変でしょ、色々。私は陽の当たるところを歩けないようなことしたと思うけどさ、あんたは違うよね。もっと堂々としていいんじゃないの」
バスのステップを上りかけた河西は振り返ってそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!