遠くて、近い

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出来るわけないだろ。堂々となんて。人目に触れる場所では恋人同士らしく振舞うことが許されないんだよ。それがどういうことが、河西ならわかるだろ。言いたかった言葉は宙に浮いて、バスが去った後のバス停に寂しく残された。  ブレーキが効かなくてただただアクセル踏みっぱなしの、感情まかせの恋。大人の落ち着いた恋なんて、十八歳にはまだ早い。その危うさに呑まれてるのは、自分だけじゃない。  廊下ですれ違い、どこかで見かけて、人の噂で聞いて。数分前までお互いその程度でしか知らなかったのに。彼女だけにはわかってもらえそうだと思えるのは、何故だろう。
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