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「おばさんもね、なんとかあなたの気持ちを大輝にわかってほしくて、友香ちゃんと会ってもらうようにお願いしたの」
「え」
友香は驚いた様子で、大輝の顔を見た。母が友香と会うことを勧めたことを知らなかったようだ。
「人を好きな気持ちは自分ではどうすることもできない。大輝と会って二人でこれからを決めたらいいと思ったの。
だからおばさんのほうがおせっかいだったわ。つらい思いをさせてごめんなさいね」
「そんな、おばさんは悪く……ないです」
「大輝も、ごめんね。貴方には大切な人がいたのでしょう?」
母の言葉に、黙って首を横に振る。
きっと母は自分が友香の気持ちに応じられないとはっきり告げるとわかっていたのかもしれない。
終わりにすることが友香のためになるということも。
「あなたは、その人とちゃんと幸せになりなさい。大輝が選んだ人なら母さんは心配してないわ」
「ありがと」
「おばさま、大丈夫よ。大輝の大切な人は素敵な人なの。大輝はとても愛されてるんだから」
「ちょっ……おまえ…」
「あら、照れなくてもいいじゃない。本当のことだし」
目元をうっすらと赤くさせたまま、友香は笑っていた。
ここまで、ひとことも相手が男だと伝えていない。それだけはいくら勢いでも、今は言えない。
「大輝、今度、会わせてちょうだいよ」
「考えとく……」
「楽しみにしてるわね」
母は本当に優しかった。自分に気遣いつつも、友香にティッシュを差し出してやり、その小さな頭を優しく頭を撫でていた。ああ、この人には敵わないな、と思うと同時に、ほっと安堵の息をついた。
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