最終章:一生、俺のそばにいてください

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「言っておくけど私が公私混同したのは、コンペに参加させるところまで、よ。龍崎コーポレートに決めたのは、うちの役員。だから、そこからは獅子ヶ谷くんの実力。それは間違いない」 「そうか」  それは少し気にしていたので、安心した。 「彼、営業としてのセンスは一流だわ。言っておいて。担当戻さないと契約切るわよって」 「え……」  やはり担当が変わる件は伝わっているのか。 「それに大輝の彼氏じゃなきゃ、広告採用してやんない」 「おまえなぁ」 「それは半分ホントよ。あなたが認めた獅子ヶ谷徹に、うちは広告を預ける気になったんだから」 「わかった。伝える」  これは絶対に獅子ヶ谷をやめさせるわけにはいかないな、と思う。 「でも、大輝、本当にいいの?」 「何が?」 「男同士で将来を共にするって、考えているよりもずっと厳しいと思うわ」 「だろうなぁ」  話の重大さは、わかっているが、なぜか自分は笑っていた。 「大輝、笑い事じゃないでしょ」 「そうなんだけど、なんか、あいつとならなんとかなる気がするんだ」 「でも獅子ヶ谷くん……迷ってたよ?」 「そうだとしたら、あいつ、俺のこと心配してるんだよ」 「え?」 「あいつ、本当に俺中心で動いてるから、俺に申し訳ないってことしか考えてないんじゃないかな。だからきっと、俺が大丈夫って言えば解決する」 「ちょっとぉ、なんか将来のことなのに軽くない?」 「いいんだよ。将来が見えなくても、それでも俺はあいつがいい」  それは驚くほど、するりと口に出ていた。 「はいはい、ごちそうさま!」 「な、なんだよ!」 「よく、振った女の前でノロケられるよね? 最低」 「はぁ!? ノロケてねーよ」 「無自覚!? もう一生仲良くやってなさいよ!」  舌をべーっと出しながら、ふくれている友香を見て、少しだけ肩の荷がおりた気がした。 ――友香、ごめんな。でもありがとう。  言葉には出さなかったけど、きっと伝わっているんだと思う。その分、自分たちは幸せにならなきゃいけないんだな、とも思った。  そして獅子ヶ谷にも伝えよう。俺は覚悟を決めたよってことを。
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