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「なんだよ」
「ううん、やっぱりハムちゃんはかっこよくて強いなぁ。さすが俺が惚れただけあるよ」
獅子ヶ谷の目に輝きが戻ってきた気がして、胸ぐらを掴んでいた手を緩めた。
「おまえがしおらしいのは、なんか、気色が悪いんだよ」
「ひっどいなぁ。でもそうだね、確かに俺らしくないかも」
「だいたいおまえは、ずうずうしいくらいがちょうどいい」
「うん。ハムちゃん、ありがとう」
さっきよりもずっと柔らかな表情で獅子ヶ谷は微笑んだ。
「褒めてないからな」
「ハムちゃん大好きだよ。これからも俺のそばにいて。絶対に手放さないから」
「おまえ、前科あるんだからな!」
「ハムちゃんの都合なんて考えない。ハムちゃんの未来も俺のものだから」
その目は強い意志を持っているように思えた。きっと獅子ヶ谷はこれから迷ったりしないだろう。
「そのほうがおまえらしくていいよ」
「だって、ハムちゃん俺のこと大好きだもんね」
「調子に乗るな」
こうしてすぐに調子に乗るとこも含めて、獅子ヶ谷徹なんだとおもう。
頬に伸びた獅子ヶ谷の手はすべるように顎を優しく掴む。引き寄せられるように、二人は唇を重ねた。
いつぶりのキスだっただろう。獅子ヶ谷も同じことを思ったのか、一度離れた唇は再び重なる。お互いの体を強く抱いて、どんどんキスが深くなる。
――獅子ヶ谷、獅子ヶ谷、獅子ヶ谷。
もう二度と離れられないように、このまま二人の体が溶けてひとつになってしまえばいいのに、そう願っているのは自分だけじゃない気がした。
「なぁ、獅子ヶ谷」
「何?」
二人は裸で抱き合い、獅子ヶ谷の胸に顔を埋めたまま、問いかけた。
「俺たちは幸せにならなきゃな」
「うん、そうだね」
獅子ヶ谷はそっと大輝の髪にキスを落とす。
「おまえのこと絶対に幸せにするから、おまえも俺を幸せにしてくれ」
「当然だよ」
獅子ヶ谷は、ふふ、と嬉しそうに笑って、ぎゅっと抱きしめる。
二人の時間がようやく戻ってきた。
これから離れていた時間を取り戻そう。いつか、そんなこともあったね、と笑って話せる日が来る。きっと遠くない未来に。
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