第4章:思い出した、好きという気持ち。

15/15
3556人が本棚に入れています
本棚に追加
/236ページ
「俺のこと少しは気にしてくれるようになったんだ?」 「違う……」 「もしかして、もう好きになってくれた?」 「……違う!好きじゃない!」 「言ったろ?欲しいものは絶対手に入れるんだよ、俺は」 「そういう傲慢なとこが嫌いだと言ったろ!」 「はっきり言うけど、俺はハムちゃん以外誰も見てない。五条さんには悪いけど」 「ダメだろ……大事な部下が悲しむ選択肢なんて選べない」 「じゃ、彼女と付き合えばいいの?俺、ハムちゃんのためなら、なんだってできる」 「ダメだ!そんないい加減な気持ちで……」 「わかったよ、ハムちゃん」  獅子ヶ谷は、浜村の頬にキスを落とす。ぶわっと顔に熱が集まるのを感じる。慌てる自分を気にすることなく、獅子ヶ谷は自分の目を見つめて言った。 「俺は、主任が…ハムちゃんのことが好きです」 「ちょっと待っ……」 「付き合ってください」  真剣な表情でそう告げられ、心臓が早鐘を打つ。 「……獅子ヶ谷?」 「あー、マジ、ありえねえんだけど!」 「は?」  途端に顔をくしゃくしゃにさせて吹き出す獅子ヶ谷に、何が起こったのか理解できない。 「告白ってこんなにキンチョーすんの!?すげえな、女って!」 「あー、……したことないのかな、獅子ヶ谷くんは」 「するワケねーじゃん。させたことしかないけど?」  とっさに、なんでこいつのこと好きだなんて思ったのかなと考えるほど、がっかりする。おまえな…と言いかけた唇は、とっさに獅子ヶ谷に塞がれた。 「おまっ……!」 「嫌だった?」 「そ、そういうの聞くなよ」 「ね、ハムちゃん、今夜はうちに来て」 「え?」 「言ってる意味、わかるよね?」 「おまえ、ケダモノか!その日にヤろうとすんな!」 「ほら、躾が大事っていうじゃん?」 「おまえから教わることなんてない!」  腕から逃げようとする浜村をぐいっと引き寄せ、その耳元で獅子ヶ谷は囁いた。 「身体に覚えさせてやるよ?ハムちゃんが誰のものかってことをさ」 「……!」  ありえない!ありえない!やっぱり間違っている。こんな肉食獣にほだされるなんてありえない。  けれど、すでに時は遅かったらしい。少しでも甘い顔を見せてしまったがために、獅子ヶ谷はもう自分と恋人になったつもりでいる。  前途多難すぎる、獅子ヶ谷とのお付き合いがこの日から勝手に始まった……らしいが、認めない。絶対に認めてやるものか。と断固拒否すると浜村は心に誓った。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!