3556人が本棚に入れています
本棚に追加
/236ページ
「俺のこと少しは気にしてくれるようになったんだ?」
「違う……」
「もしかして、もう好きになってくれた?」
「……違う!好きじゃない!」
「言ったろ?欲しいものは絶対手に入れるんだよ、俺は」
「そういう傲慢なとこが嫌いだと言ったろ!」
「はっきり言うけど、俺はハムちゃん以外誰も見てない。五条さんには悪いけど」
「ダメだろ……大事な部下が悲しむ選択肢なんて選べない」
「じゃ、彼女と付き合えばいいの?俺、ハムちゃんのためなら、なんだってできる」
「ダメだ!そんないい加減な気持ちで……」
「わかったよ、ハムちゃん」
獅子ヶ谷は、浜村の頬にキスを落とす。ぶわっと顔に熱が集まるのを感じる。慌てる自分を気にすることなく、獅子ヶ谷は自分の目を見つめて言った。
「俺は、主任が…ハムちゃんのことが好きです」
「ちょっと待っ……」
「付き合ってください」
真剣な表情でそう告げられ、心臓が早鐘を打つ。
「……獅子ヶ谷?」
「あー、マジ、ありえねえんだけど!」
「は?」
途端に顔をくしゃくしゃにさせて吹き出す獅子ヶ谷に、何が起こったのか理解できない。
「告白ってこんなにキンチョーすんの!?すげえな、女って!」
「あー、……したことないのかな、獅子ヶ谷くんは」
「するワケねーじゃん。させたことしかないけど?」
とっさに、なんでこいつのこと好きだなんて思ったのかなと考えるほど、がっかりする。おまえな…と言いかけた唇は、とっさに獅子ヶ谷に塞がれた。
「おまっ……!」
「嫌だった?」
「そ、そういうの聞くなよ」
「ね、ハムちゃん、今夜はうちに来て」
「え?」
「言ってる意味、わかるよね?」
「おまえ、ケダモノか!その日にヤろうとすんな!」
「ほら、躾が大事っていうじゃん?」
「おまえから教わることなんてない!」
腕から逃げようとする浜村をぐいっと引き寄せ、その耳元で獅子ヶ谷は囁いた。
「身体に覚えさせてやるよ?ハムちゃんが誰のものかってことをさ」
「……!」
ありえない!ありえない!やっぱり間違っている。こんな肉食獣にほだされるなんてありえない。
けれど、すでに時は遅かったらしい。少しでも甘い顔を見せてしまったがために、獅子ヶ谷はもう自分と恋人になったつもりでいる。
前途多難すぎる、獅子ヶ谷とのお付き合いがこの日から勝手に始まった……らしいが、認めない。絶対に認めてやるものか。と断固拒否すると浜村は心に誓った。
最初のコメントを投稿しよう!