第1章

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港区白金台の占術師纐纈敏郎の事務所を一人の女性が訪れていた。女性の名は佐伯和美と言った。 テーブルの上には一枚の封筒が置いてある。纐纈は軽く封筒の上に手をかざした。 「佐伯様、これは心霊写真ではありませんよ」 「先生、写真をまだ見ていませんが…」 「心霊写真は画像を見る必要は無いんです。写真から波動を読み取るんですよ」 和美は、 「先生、一応、目を通して頂いてよろしいですか?」 そう言うと、封筒の中から一枚の写真を出して封筒の上に置いた。その写真は家の中に和美が立っているスナップだったが、和美の隣にボウッと白い人影が写っていた。 纐纈は写真を手に取ると、 「佐伯様、これは合成写真です。近頃は簡単に偽心霊写真が作れますから。心霊雑誌に出ている心霊写真にさえ偽心霊写真が混じっているくらいです。」 和美は驚いた。 纐纈は続けた。 「心霊写真には土地にまつわる地縛霊や霊道を通る浮遊霊が写りこむ場合、撮影者、被写体の方に入っている家系因縁の怨霊が写りこむ場合があります。まれに、神仏や精霊が写るケースもあります。珍しいモノでは、葬儀の遺影の額縁だけが写ったモノも見たことがあります。その場合は近いうちに近親者に葬儀があるお知らせですが」 和美は、納得したように、 「そうでしたか…」 と、答えた。 「佐伯様、この写真はどなたが撮られたんですか?」 「私の婚約者です。こんな写真が撮れたから、この家は手離したほうが良いと言われました…」 「なるほど…そう言うことでしたか!」 纐纈は溜め息をついて、さらに、 「その方に注意されたほうが良いかも知れませんね!」 と忠告した。 用件が済み、和美が事務所を出て行こうとした時、纐纈が、 「ただ、こんな事があります。偽心霊写真を作っても、それを作った人に入っている家系因縁の怨霊が、偽心霊写真を本物の心霊写真にしてしまうことがあります」 とアドバイスをした。
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