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そう言って、遺言書の写しを響子に渡した。
院長は、
「お父様は、結婚式の当日に御自分が危篤状態になられた時には、その事を娘に知らせないで欲しいと書かれました。披露宴が終わるまでは伏せるようにと」
そう言った。
響子は納得できなかった。
「しかし、父は結婚式に来てくれたんです」
「お父様は、10時少し前に意識不明になり、11時7分に息を引き取られました。もし、お父様が式に出られたなら、魂が抜けて行かれたのかも知れません。どうしても、出てやりたい。娘の花嫁姿が見たいとおっしゃられていましたから」
響子の頬を大粒の涙が流れ落ちた。
「お父さん!」
響子が父の亡き骸を抱きしめた時、フッとラベンダーの香りがした。
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