第1章

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そして、当日。響子は、朝から忙しく支度に追われた。 間も無く10時になろうという時間になって、父が式場に入った。顔色も良く、車椅子は使わずに杖をついた来た。 「お父さん、ありがとう!」 そう言って、響子は父を抱きしめた。 「看護師さんは?」 「ロビーで待っているか、ラウンジだろう。何かあったら来てくれるから、心配いらないよ」 「そう、良かった!今日は、お父さん調子が良いみたいで安心したよ。来てもらえないんじゃないかと思って心配しちゃった」 そう言って響子は喜んだ。 式では、父が響子に支えられながら祭壇の前に立つことができた。 式が終わって、休憩を挟んで、いざ披露宴という時になって、父の姿が見えなくなった。ちょっと目を離した隙の事だった。トイレかと思い、男性に探させたが、どこにも見当たらなかった。 響子は慌てて看護師を探した。しかし、看護師の姿もどこにも見当たらない。 響子は不安になって、病院に電話をした。 「すみません!響子ですが、突然、父が式場からいなくなってしまったんですが。看護師さんは、連絡つかないでしょうか?」 すると、受付の職員は、 「お待ち下さい。院長に代わります」 そう言って、少し待たされたあと、院長が電話に出た。 「響子さんですね。お父様なら、心配いりませんから、こちらにいらっしゃいますから、ご安心下さい」 との事だった。父は無理をしないようにとの病院側の配慮により、式だけ出席して病院に帰っていたのだった。 父は不在だったが、花嫁姿を見てもらえて、響子は嬉しかった。 披露宴が終わり、後片付けは他の人に任せて、響子は彼と病院に急いだ。 病院に着くと、すぐに父の病室に行った。 父はベッドに身体を横たえ、顔に白い裂を掛けていた。 「どうしたんです!これは、どういうことですか!どうして!」 傍らに立って、院長が、 「驚かれるのも無理はありません。お父様は、遺言を遺されました。ご覧下さい」
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