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あくまで雪野を立ててくれる樹村。
「真聡が羨ましい。こんな素敵な人と公私共にお世話になっているなんて」
「だろう? だめだぞー、涼太郎、メグを好きになったら。メグは俺のもんだからな」
「そうだな、気を付けるよ……」
少し樹村の雰囲気が変わったような気がした。
しばらく3人で話していたが、真聡のスマホに友人から電話が入り、その場を中座した。
雪野と樹村、二人きり。
日曜の夕方だからか、それ程客は多くない店内。
静かではないが、賑やかでもない。
3人で会話していたから間が持っていたが、突然の2人の空間に雪野は少し戸惑う。
しかしそれはおくびにも出さない。
雪野は社会人で、仮にも役職さえ持っている立場。
苦手な人との応対も割りきってこなすことは可能なのだ。
年下に媚を売るように話しかけたりはせず、静かに飲んだり食べたりしていた。
痺れを切らし、口火を切ったのは樹村だった。
「俺、真聡、好きなんです」
「うん、気付いてたよ」
「こないだはすみませんでした。敵意剥き出しで。痛かったでしょう、手」
「あれは効いたな」
雪野が笑いながら右手を軽く開閉する。
「今日、どうして僕に会いたかったのかな?」
「雪野さんがどんな人か知りたくて」
「で、どうだった?」
「カッコいいし優しいし、すごくいい方だと思います。社会人としても尊敬します。でも……」
先日、あんなに自信満々だった樹村だが、途端に不安気な顔つきになる。
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