第1章 囁きは秘め事の如く

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 鳴海は思い出した。斎藤は麻衣の前カレだ。  ーー麻衣の奴、こいつに愚痴ったな。  自分に未練を残している男に、同情させてどうしようというのか。もしかしたら鳴海にヤキモチを妬かせたいのかもしれない。斎藤は鳴海に難癖をつけて追い出し、麻衣と寄りを戻したいのだろう。  彼らの魂胆に思い至ると、鳴海はこの状況が途端に馬鹿らしくなった。  どうせ麻衣とは別れるつもりだった。  ――あんな女、のし付けて返してやる。 「分かりました。今日で退部します。どうもお世話になりました」
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