第3章 Love you too

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 しかし鳴海がメールを見せろと言えば、素直に見せてくれる。  お誘いもきちんと断ってくれる。  その度に雪野はやはり鳴海を一番に好いてくれているのだと認識する。  鳴海はここまで恋人を束縛したことがない。  どちらかというと束縛される側だったのだ。  鳴海は彼女がいても他の女性から秋波を送られることが多かった。  その度に浮気を疑われた。携帯電話をチェックされてキレた回数は数えきれない。  まあ実際に浮気していたことが多かったのだが。  今考えれば歴代の彼女たちはいつも不安だったのだろう。  鳴海が浮気して他の女のところへ行ってしまうと。  申し訳ないことをした。  雪野を好きになってようやくあの子たちの気持ちが理解出来た。 ーーあれ、俺って……今相当ウザい奴ってこと?  昔、鳴海は束縛しようとする彼女たちをばっさばっさと切り捨ててきた。  泣いて縋ってこようがお構いなしだった。  しかし今、元カノたちと同じことをしている鳴海だ。 「メグ……」 「なぁに?」  読書を中断もしないで返事だけする雪野。  鳴海はたったこれだけのことにも胸につきんと痛みを覚える。 「俺さ、うざくね?」  家に入り浸って。四六時中監視して。平日休日小判鮫のようにくっついて。メールも電話もチェックして。  ウザい程の束縛。鳴海はこれが原因で振られてしまうのではないか。  昔の元カノたちのように。鳴海は怖くなる。だが。 「え? 何が? 全然ウザくとかないけど?」  この時ようやく雪野が鳴海を見てくれた。  リラックスした可愛い笑顔。鳴海は安堵した。  良かった。雪野は鳴海の窮屈過ぎる束縛を嫌がっていない。ていうか気付いていない。  この時ばかりは雪野の鈍感さに感謝した。 ーー俺はあなたを好きすぎるみたいだ。ストーカーはむしろ俺の方かもしれない。  鳴海は雪野への溢れんばかりの愛を持て余すのだった。 【次章へ続く】
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