第4章 Close to you

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「俺、年末から1月いっぱい、実家に帰るから」  そう告げるのは、雪野恵の9歳年下の恋人、大学3年生の鳴海真聡。 「そう」 「あれ、冷たいなあ、メグ。理由聞いてくれないの?」  雪野のマンションで半同棲状態の2人。  鳴海が雪野を後ろから抱きしめるいつものスタイルで寛いでいる。 「理由って……真聡、夏も結局帰ってないし」  実家に帰るのに理由を聞くのは野暮だ。  学生が帰省するのは当たり前。 「そうだけどさ。『帰らないで』とか、そういうの期待すんじゃん」 「バカ。そんな事言うわけないだろ」 「ちぇ、つまんないの」  後ろから雪野の首筋に顔を埋め、甘えてくる。 ーー可愛い、真聡。大好き。  雪野は前に回された腕にそっと手を添える。  鳴海と付き合いだして1年半近く。  これ程長く続くとは雪野は思っていなかった。  鳴海はまだ21歳。  雪野と違い、男性が恋愛対象ではないはず。  いつ女性の元に戻っても不思議ではない。  鳴海からの愛情はひしひしと感じる。  しかし雪野のそれを上回ることはないだろう。  雪野はそれ程この年下の恋人にメロメロなのだ。 「メグ、ただの帰省って思ってるだろ? じゃなくて、就活だよ」 「就活?」 「インターンシップ。俺が狙ってる商社にダメ元でエントリーしたら審査通ったんだよ」  今年の夏から学業やバイトと平行して、就活に備えていろいろ準備をしているのは知っていた。  本命の商社は、誰もが羨む大企業。  ここで約3週間インターン生として出向くのだ。 「そんな大企業にインターンに行けるんだね。もう内定貰ったも同然じゃないか」 「そんな簡単に行くわけないよ」 「真聡なら大丈夫」 「ふふ、メグに言われるとそんな気がしてくるから不思議だ」  鳴海が雪野の顔をそっと振り向かせる。
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