1991人が本棚に入れています
本棚に追加
/652ページ
「涼太郎? あ、うん。えっ? ははっ……」
雪野の横で樹村と話す鳴海が、『少し待って』とアイコンタクトを送ってくる。
それに薄く微笑んで雪野は了解の意思を表す。
今日鳴海が雪野と過ごしている事を、樹村は知っていて電話をかけている。
一昨日、強い悪意を樹村から感じていた雪野は、嫌な予感をせずにはいられない。
そんな雪野の心中を察する事ない鳴海がスマホから顔を離して、雪野に話しかけた。
「涼太郎がさ、メグと3人で夕飯食べたいっていうんだけど、どうかな?」
「夕飯……」
「メグに聞きたいことがあるんだって」
聞きたい事は、鳴海のことだろうか。
彼の近寄り難い雰囲気は苦手だが、鳴海が仲良くしている人であれば、邪険に出来ない。
「ん、いいよ」
「サンキュ」
そう言うと鳴海は樹村に了承の意を告げて、通話を切った。
「ごめんな、ほったらかしにして」
「それはいいんだけど、樹村くん、僕に何を聞きたいんだろうね」
「俺がメグのこと、接客のプロだって自慢してたからかな。仕事のこととか聞きたいんじゃない?」
「そんなに僕のこと、彼に話してたのか?」
「涼太郎、俺の恋人が男って知っても、全然偏見とかないから、つい。だって向こうだとメグの自慢話って出来ないじゃん」
「自慢とかしなくていいし」
「何でだよ、俺のカレシはすごいんだって、大声で言いたいんだっ、本当はっ」
地団駄を踏んで剥れる鳴海は、小学生みたいだ。
雪野はそんな鳴海を密かに可愛いと思わずにはいられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!