第4章 Close to you

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 雪野の懸念は杞憂だったのかもしれない。 「雪野さん、飲んでますか?」 「あ、うん」  待ち合わせは、一昨日と同じ東京駅。  近くまで来ていたからと、雪野のホテルに近いダイニングバーで飲んでいる。 「ビールでいいですか? それともワインに頼みます?」 「あ、そうだね、ワイン貰おうか」  先日、あんなに黒く纏っていた攻撃的な空気がない。  きつく雪野を睨んでいた目は、鳴海を見るのと同じ優しい眼差し。  今も甲斐甲斐しく雪野の世話をしてくれている。 「俺、雪野さんともう一度話したかったんで、今日会えてすごく嬉しいです」 「ははっ……どうもありがとう」 「涼太郎! メグに顔が近いっ、離れろ」  鳴海と樹村は、結構飲んでいる。 「君たちは、明日からまた仕事だろう? そんなに飲んで大丈夫なのか?」 「俺、アルコールが残らない体質なんで全然大丈夫。大丈夫じゃないのはこいつかな」 「うるせぇ、おまえより少し弱いだけだっ」 「結局弱いじゃん」  樹村は普段着のせいか、雰囲気がだいぶ柔らかくなっている。  鳴海と話す口調も、友達のそれ。 ーー一昨日は僕の勘違いだったのかな。  それでも最後の握手が痛かったのは夢ではない。 「先ほど聞かせていただいた接客のお話、大変ためになりました」 「そう言って貰えると嬉しいが、君たちの仕事にはあまり関係だろう。偉そうに話して申し訳ないね」 「いいえ、人との接し方はどの業界、どの職種でも大切です。だからためにならない訳がありません」
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