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一気に10階まで上がって来たけど、さすがにあたしの方が息が切れて来ちゃった。
「志村課長、なにか運動をなさってるんですか?」
「俺?ジムに行くくらいしかしてないな。神倉さんは?」
「こちらに来てからはなにもしてませんが、あたしも基本的にはジムですね。特に泳いでカロリーを消費させてます」
11階で扉を開けて中に入って、外からの空間を遮断すると、今まで耳に入って来ていた車の音や、近くで行われている工事の音などがシャットアウトされて静かになる。
「ちょっと息を整えさせて」
なんともないような姿だったけど、やはり9階分も一気に上がると、たとえ運動をしていても息が切れるようね。
「あたしも、少しキマシタね」
難攻不落のマウンテンを制覇した同士のような感覚で、自然と笑顔が出てしまう。
息を整えている志村課長も同じお気持ちなのか、こちらも笑顔だ。
「よし!じゃあまずはこのフロアの経営企画部と人事部に行こう」
「はい。お願いします」
そろそろお昼休みが終わる時間で、社内に残っている皆さんも、ご自分のデスクに戻られているようで
あたし達が一歩開け広げられたフロアに足を踏み入れると、視線が集中して向かって来る。
よそ者が来た感覚には、イマイチまだ慣れない。
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