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重たい足取りでドアを開ければ、恐縮しきった下級生。
見慣れない顔は、春休みから新入りの1年生だ。使いパシリにされたのがよくわかる。
でも……何も、そこまで怖がらなくても。
「あ、あああああのっ!く、くくクレハ先輩!!
お昼のお食事のご用意が、で、できておりますっ!!」
普通はもう少し、部屋の内装だったりアタシの外見だったりに興味を持つところだろうに、彼女はそんな余裕もナイらしい。
ただただ、下を向いている。
……無理もない、か。
理事長の親戚らしきアイリ先輩を丸め込み、卒業なさった後まで特等室で一人暮らししている危険なヒト。
学祭荒らしで、生徒会と対立する、実力者。
成績優秀で先生達ですら文句が言えず、極めつけはヤンキーとつき合っている。
まぁ、そんな噂を聞かせられれば、緊張するよね……。
噂に抗議するとすれば、一つ。
コウはヤンキーじゃない。
「ありがたいけど、大丈夫だから。
自分で時間を見て降りるわ。気にしないでね?」
できるだけアイリさんの優しい口調を真似て、ツインテールの後輩を見下ろした。
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