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ブブ、ブブ、ブブ……
ふいに枕元のスマホが鳴った。
このリズム!!
一気に起き上がると、慌てて通話をオンにする。
「もしもしコウっ!?」
「おぅ、元気か」
流れてきた、低くハスキーな声。
アタシはほっと息をついた。
「元気に決まってるよ、昨日もメールしたでしょ」
「声聞いて信じた」
このスマホは、コウがプロ転向後初めての賞金で買ってくれた。
アタシの家が大変なのを知っているから、しかも、アタシの性格も知っているから。相談もなく、有無を言わさず渡された物だった。
申し訳ないことに、通話料もコウが払ってくれている。パケット代込みと教えられて、アタシは部屋にいる時、コウと頻繁にメールした。
他には、最低限しか使わない。
実家を出て自分の好きな人生を歩むコウは、親の支援を拒んでいると聞いた。
「ところで、予選どうだったの?」
「おまえ……オレのコト信用してねぇな」
「え……?
あっ、おめでとう!」
「めでたくない。当然だ」
レースの予定やら所属チームの合宿やらで、コウもなかなか忙しい。
なかなか会えない代わりのスマホだということは、アタシにだってわかってる。
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