第1章

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 桜太にとってはとんでもないハプニングがあったものの、科学部は何事もなかったように次の謎について話し合いを始めた。  現状として莉音とはぎくしゃくしていない。まあ、桜太にとっては新しい父親になるかもしれないので、良好な関係を保っておくのが無難だろう。先輩ではなく父上と呼ぶ心構えも必要かもしれない。そんな未来は来てほしくないが。 「それじゃあ、次に解明するものを決めよう」  桜太は黒板に七不思議の残りを書き出すと、全員を見渡した。 「ここからが問題だよな。具体性に欠けるものが3つと、この化学教室のものだ。化学教室の謎を解くっていうのは、新入生のアピールに使えそうだけどさ」  黒板に書き出された七不思議を見て楓翔が指摘する。 「そうだな。化学教室の謎の出どころは奈良井先輩だったよな。どういう話なんですか?先輩」  迅が後ろを振り向いて訊いた。この話の詳細が解らないのは優我がちゃんと語っていないせいだが、本人がいるので芳樹から聞くのが一番である。 「えっ?俺?」  その芳樹はアマガエルを掌に載せて頭を撫でているところだった。自分の名前が呼ばれた理由が理解できずにきょとんとしている。 「えっと。昔ここで謎の光を見たんですよね?」  桜太は芳樹の反応に頭痛がしてきた。絶対に昨日のたん瘤のせいではない。どうして毎回すんなりと七不思議の話にならないのだろうか。根本的に間違っているとの指摘もあるだろうが謎だ。 「ああ。あれね。実験中に漂う光を見たんだよ。けどさ、実験中ってことは普段とは環境が違ったわけだし、何か化学反応が起きたんだろうとしか思ってないけど」  芳樹はカエルの頭を撫でつつそう述べる。しかしこれではまた七不思議不成立だ。けれども化学反応というのは気になる。
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