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「取り敢えず、久々に科学部らしいこの謎を解明しよう。今まで何がしたいのかよく解らなかったからな」
なぜか何も覚えていない亜塔がまとめる。しかも今までの苦労を水の泡にしてくれる発言まであった。
「そうですね。まずは資料のありかを聞きに松崎先生のところに行きますか」
桜太は疲れを感じながら提案した。そしてまたぞろぞろと職員室に向かうこととなる。
「南館は暑いな」
渡り廊下から南館に入った瞬間、優我が呟いた。たしかに夏日ががんがんに差し込む南館は暑い。北館のような湿度はないものの、熱気に包まれている。しかも夏休みとあって冷房は節約されているらしく、廊下は息苦しいほどだ。
「俺が聴いてくるよ」
桜太は全員で職員室に入るのは無理かと申し出た。そういえば、どうして八人全員でやって来たのだろう。別に記録さえ貰えばいいはずなのに、当然という顔をして三年生がついて来たのが不安だ。
「失礼します」
ドアを開けると、涼しい風があった。桜太は職員室の中は冷房が効いていることにほっとする。
「おう、上条。どうした?」
すぐに松崎が反応した。しかも手には大盛りカップ麺が握られている。声の掛け方といい食べているものといい男子大学生のようだ。とても結婚前の女性とは思えない。
「松崎先生。科学部が以前にしていた実験の記録ってどこにありますか?」
桜太は机に近づき、とんこつの匂いに顔を顰めた。それはもう濃厚な香りが漂っている。ここは女性らしくサラダと一緒に食べているのかと一縷の望みをかけて机の上を覗いたが、そこには何故かコロッケがあった。何だか発想が菜々絵と似ている気がしてきて嫌になる。
「ああ。あの大量に記録ね。それなら北館の一階の、図書室の横の倉庫に入れてあるよ」
ずるずると麺を啜りながら松崎は答える。教師としてあるまじき態度だ。
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