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しかし、そう言われても、そうしなければ勝てないのなら、僕は躊躇うことはないだろう。死んででも、勝ち続けたいのだから。
「あーあー、そんな迷いのない目をこっちに向けんな。若い頃を思い出しちまう」
総学院長は嫌そうに手を振り、
「……まぁ、無茶は若者の特権だからなぁ。あん時の先生は、こんな気持ちだったのかねえ」
懐かしそうに腕を組んでウンウンと頷いている。
「おっと、思い出話は必要ないな。それよりも、お前に聞きたいことがある」
僕は首を傾げ、
「……何のことでしょうか」
総学院長は意地の悪い笑みを浮かべ、
「お前、人間ばかりの東校舎に再編入するってなってるけど、どうする?」
僕は少しの間の後、苦笑し、
「……取り消しで、お願いします。僕は、この戦いから降りる気は、もうありません」
「そう言うだろうと思ったよ」
総学院長は悪ガキのように笑いながら、指を振る。その一動作で、きっと再編入は取り消されたのだろう。この人なら可能だろうし。
言いたいことを言い切ったのであろう総学院長は、伸びをしながら、
「じゃ、俺はこれで。今日はまだ授業があるが、もう寮に帰っていいぞ。自分の部屋でゆっくり勝利の余韻にでも浸ってな」
僕は時計を見る。時刻は10時40分。授業中だ。
あれ、あの勝負を行ったのは、放課後だったはず……。
「……あの、僕はどれくらい眠っていたんですか?」
「日付が変わる程度には寝てたぞ」
結構、大事だった。困ったな……。
「……これは、覚悟して使わないと……」
「使うなっつーの」
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