『エピローグ』

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柔らかな感触と暖かさと混乱で手をばたつかせていると、クロエは泣き声で、 「このっ、バカ者! アホっ! スカポンタン! 急に倒れて心配させおって! やっぱり吸魂は危険だったんじゃ! ごめんのうナミヒト! もうせんから許してくれ! そしてさっさと起きて欲しかったのじゃー!」 「あぷ、だいじょぶ、だから。怒ってなんか、ないから」 「ホントか!? 我が夜通し看病してても目覚めんかったんじゃぞ!? とっても危なかったんじゃぞ!? 大体の治癒魔法を施した総学院長にそう言われたんじゃ! ナミヒトが気付いてなかっただけで、我は、なんと危険なことを、うぇ、うええええええん!」 僕を力いっぱい抱きしめながら、わんわん泣きているクロエ。僕は、クロエの背中をポンポンと叩き、 「だい、じょうぶだから。一旦、離して。苦しい」 「えっ? わっ!? すっ、すまぬ!」 クロエが僕を胸に抱いていることにようやく気付いたようで、パッと僕を解放してくれた。 僕は居住まいを正しつつ、 「その話は、さっき総学院長に聞いた」 治癒魔法は聞いてないけど。また今度お礼を言わないと。 「その上で繰り返し言おう。怒ってなんかいないよ」 「ほ、ホント?いいのか? 連合解消したりしない?」 「しない。キミがいないと困るからね」 「……そ、そうか。ふへっ」 クロエがにやける。なんだか、らしくない笑い方だ。何度か見た、快活な笑いではなく、なんとなく湿った感じの笑みだ。 まぁ、笑っているのには違いはない。僕は特に気にせず、 「それどころか、これからも必要になれば吸魂に頼るつもりで」 「ダメじゃ」 クロエはとても、とても険しい顔でそう言う。 「……いや、でも、そうしないとこれから勝ち進むには」 「ぜっっったいダメじゃ」 「…………ホントに、最後の手段で」 「……………………」 「……また今度、他の手を一緒に考えようか」 「うむっ♪ そうするとしよう!」 とても怖い目で睨まれてしまった。今はとてもご機嫌そうだから、いいけど。
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