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僕は、改めてクロエを見て、疑問が生じた。
「……元の姿に戻ってるね。なんでだい?」
「うむ、それはの、ナミヒトが倒れたから、出来る限り、全魔力を投入してナミヒトに治癒魔法をかけたんじゃ。それでどうにも、魔力を使い果たしたみたいで、気付いたら元に姿に……」
だんだん、クロエの声のトーンが落ちてきた。
「そう、元の姿に戻るほど、魔力を注ぎ込んだのに……。テレパシーで直接意識に声送ってもいたのじゃが、元の姿に戻るとそれも出来なくなるし……。手を尽くしても目を覚まさないものじゃから……もう、血の気が引いて……。わ、我は、ナミヒトになんてことを……!」
「大丈夫、大丈夫だから。泣かないで。お願いだから」
「総学院長が治癒魔法をかけても、起きるまで時間がかかると言って……。か、看病してても、浅い息をしとるだけで、揺すっても、手を握っても起きてくれんから……う、ううう……」
僕は再び目を潤ませるクロエ。僕はしどろもどろになりながらも、ポケットからハンカチを取り出して彼女の目元を拭うと、
「ううう……う、ぷふっ、くふふ……ナミヒトはハンカチを持ち歩いとるんじゃの。くふふ、ホントに、可愛らしい……」
僕がハンカチを持ち歩いているのが面白かったようで、クスクス笑いだす。泣きそうになっていると思ったら、すぐに笑っている。表情、感情の変化が早くて朗らかで、羨ましいものだ。
だが、そんなに笑うことじゃないだろう。持ってていいだろう、ハンカチくらい。むしろいいことだろう、ハンカチ。
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