29人が本棚に入れています
本棚に追加
「……真面目だと言って欲しいな」
「すまぬすまぬ、そんなに拗ねるでない」
そう言いながら、クロエは僕を撫でる。子供扱いされているみたいだが、まぁ、心地良いからいいだろう。
「……ゴクリ」
僕は撫でくられていると、クロエが喉を鳴らした。彼女を見ると、顔が赤い。興奮しているように見える。
「……まだ戦いの余韻が残っているのかい?」
「……もう抜けきっとるわ。ただ……。ナミヒトは、その……思っていることが、顔に出るようになったみたいじゃの……心地良さそうな顔をしてからに……」
クロエは目を逸らしながらそう言った。
僕は自分の頬を手で撫でてみるが、自分ではよく分からない。少し顔のこわばりは取れたかも。
「…………」
「……何故顔を背ける」
「……き、気にせんでくれ……わ、我に構わず、顔を、ふにふにするといい……」
そう言いながら、ふるふる震えるクロエ。
……まぁ、男が仏頂面で自分の顔をぐにぐにと弄っていたら、滑稽かな。
僕は恥ずかしくなって、手を顔から離す。
「ああっ、気にせんで続けてくれてもよかったのにっ」
「うるさい」
笑われながらしてやるものか。
「可愛かったのに……」
「なんだって?」
「なんでもないわい」
クロエはプイっとそっぽを向く。感情があっちに行ったりこっちに行ったり。見てて飽きない。
しかし、可愛い可愛いなどと言ってからかわないでほしいものだ。可愛くありたいわけでも、言われたいわけでもないし。
最初のコメントを投稿しよう!