ep1.プロローグ

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 この学園に通いだして1週間。入学式の時に、学校案内はあったものの、何度校内図を見ても私には何処に何があるのかまだ分からない。移動教室のある授業は、クラスメイトの一番後ろにくっついていけば良いし、勉強には支障もない。  それにしても、1週間も経つというのに未だにクラスには馴染めない事が気になっている。『可愛い制服だからという理由で、片道一時間のこんなに遠い学校を選ぶなんて!』と、入学式からずっと母に毎日言われている。  …仕方ないじゃない、地元の高校に行けばまた私は独りだもの。けれど、ほとんどが地元の子ばかり集まるこの学園では、新参者が輪の中に入るのは難しい。結局、どんな進路を選んでも私は独りなのかもしれない。  私は笹野。名前なんて呼ばれないから、もう自分で自分の名前も忘れてしまいそうな位だ。きっと卒業する時にフルネームで呼ばれて『笹野って、下の名前あったんだな』と笑われるに違いない。…あぁ、これでは中学の時と同じだ。  この3年間でも、友達なんてきっとできないだろう。愛想笑いできたり絶妙な距離感で馴染めないクラスメイトばかりだ。
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