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「あー!一生だ!」
美里が俺を指さして叫んでから、
「ちょっとおしっこしてくるねー。」
と言って、トイレの方へフラフラと歩いて行った。
いい年した女が『おしっこ』なんて大声で言うなよ。
横松も俺と同じように呆れた目をしている。
うるさい美里にあれこれ言われる前に退散しようと考えた俺は、
「ここで待ってるから。」
と希歩に声をかけて、入り口のベンチに腰掛けた。
はいと頷いた希歩は、みんなのところに戻るとペコペコお辞儀をして、バッグを持って俺のところに飛んできた。
「もういい?帰るか。」
「はい。お待たせしました。」
肩を抱き寄せると、さっきみたいにピトッとくっついてきた。
うん。大丈夫だ。
マネージャーのことはまだちょっと心配だけど、希歩が俺に夢中なことはあいつにもわかっただろう。
「夕ご飯、食べました?」
「食べたけど、今、猛烈に希歩が食べたい。」
「ん。私も食べてほしいです。」
そんなことを言われて、潤んだ瞳で見上げられたら、ドキドキと心臓がうるさくなって仕方ない。
「早く帰ろう。」
2人の家に。
「先輩、髪の毛、伸びましたね。」
希歩が俺の頭をそっと撫でる。
退院した頃スキンヘッドだった頭も、今では普通の髪の長さになった。
後頭部に残る傷跡も髪に隠れて見えなくなっている。
「式場、予約しに行くか。」
「そう…です…ね。」
苦しそうな希歩の息遣いに興奮が高まっていく。
口に含んで舌で転がしていた希歩の胸の頂きから口を離した。
チュポッという音がバスルームに響いて、卑猥に聞こえる。
やっと希歩と一緒に風呂に入るという長年の夢が叶った俺は、かなりの上機嫌。
チュウッと吸い付いて跡をつけたのは、希歩が仕事で着るブラウスの胸元から見えるか見えないかギリギリの位置。
マネージャーが胸元を覗き込もうとしたら、たぶん見えるだろう。
でも、こんな虫除けをつけても、やっぱり不安は残る。
敵は結婚指輪を嵌めている女に、大して酔ってもいないのにもたれかかるような男だ。
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