好きでいるということ

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タン、タン…。 相棒のカタキ討ちに燃える私を邪魔するかのように、誰かの足音がした。 「姉ちゃん、また廊下を散らかして。 オレ、足の踏み場が無いんだけど。」 撮影中の私の許可も取らず、弟が下から階段を登る。 「ちょっと集中しているんだから開けないで!」 叱ろうと後ろに向くや弟の手につままれていたのは、無残に潰れた紙風船。 「いちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」 かん高い叫び。 私は、思わず紙風船に向かって絶叫した! 私の子供…私の刃、私の希望が見るも無残な姿に! しかも、弟が下から来たということはおそらく下の息子たちの壁は…。 「紙風船に名前つけてんじゃねぇよ、バカ姉貴! 『人工呼吸』だなんてわけ分からんタイトルつけて紙風船が猫を追い回す変な動画を投稿しやがって! 姉ちゃんの動画はつまらねぇんだよ! つまらねぇ動画作るためにうちのパソコン占領するんじゃねぇよ! しょせん、どう頑張ってもあの動画には勝てねぇんだから!」 弟が私を説得しようとするが…それで諦める私ではない。 私は、あの超生命体が許せないのだ。 なぜ、あんな柔軟かつ残酷な超生命体がこの世界に存在し…人間はそんな生物を飼おうと考えるのだろう? 水を浴びせば暴れる。 気まぐれに爪で家の木材を引っ掻いて破壊する。 紙風船は超生命体とは違って自我も持たないが人間に対して従順だ。 超生命体の動画をつくるさい…傷だらけになった苦い記憶が蘇る。 そして、私はすべてに勝ちたい…私が作る動画をたくさんの人に知って欲しかった。 紙風船に名前をつけて可愛がる人間など、まずいないのではなかろうか…これも個性と言えなくもない。 「ミャー!」 そのとき、うちでも親に飼われている白い超生命体が私の紙風船の16番目の兄弟の『いざよいろー』を爪で引っ掻きながら転がし…潰していた。 私の相棒の兄弟は、こうして超生命体の狩猟により年に数回この世を去っている。
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