第一章 告白の一瞬を

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【來斗side】 君を見た瞬間は永遠となった。 正確に言うと、時間が止まったように感じた。 「あのっ」 無意識に俺は君に声をかけてしまっていた。 振り向くと君の長い髪が揺れてドキッとした。 君は何も言わずただ、俺の事を見ていた。 次第にその首は傾いた。 「えっと…、私に何か用ですか…?」 その声はすごく透き通っていた。 きっと心の澄んだ人にしか出せない、そんな声。 「あっ、えっと、その…、荷物、持ちましょうか…?」 俺はなんとかはぐらかした。いや、はぐらかせたのだろうか。自分でもなんとも不自然だと思う。 でも、言ってる事は本心だ。君が持っているダンボールは2つで女の子が持つ量じゃないと思う。多分、日直かなんかで担任の先生か誰かに押し付けられたのだろう。可哀想に。 「…すいません。お願いしてもいいですか?職員室までなんですけど、1階までこの荷物を持って降りるのはちょっと」 君はそう言って困った顔をした。 確かにここは3階だ。職員室のある1階までその重たそうな荷物を持って降りるのは大変だと思う。 「じゃあ俺が持つから、着いて来てもらってもいいですか?」 「いえ!1つ持ってもらえば。これは私の仕事なので」 その一言を聞いて良い子なんだなと思った。だって俺に頼ってもいいのに。まあ、顔も知らない人にそんなことできないか。 「わかりました。じゃあ、俺が1つだけ持ちますね。重たくなったら言ってください」 俺はそう言って上のダンボールを持った。そんなに重たくはなかったが、もう1つとなると結構重いと思う。それに女の子だし。 「ありがとうございます。あの、同じ学年ですよね?」 「あぁ、俺2年」 「じゃあ、同んなじですね。…敬語、やめません?同い年なんですし」 それを聞いてそう言えば、と思った。確かに同い年なのに敬語はおかしい。 「そうだな。俺、3組の成沢來斗(なるさわらいと)。君は?」 「私は1組の相澤風歌(あいざわふうか)。よろしくね」 相澤風歌。可愛い名前だな。そう思った。 「こちらこそ」 俺たちはその後、職員室に荷物を届けた。 「ありがとう。すごく助かった」 「いいや。あんな重い物を女の子に運ばせる先生が悪いんだよ」 「ふふっ。じゃあまたねっ」 君はそう言うと長い髪を揺らしながら帰って行った。 俺はまだ、この不思議な気持ちがなんなのかわかんなかった。
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