第1章

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「そういえば大倉先輩がアンモニアを被ったって言ってましたよね。それも事故じゃないんですか?」  桜太はふと疑問に思った。亜塔は何かをぼんっとやったのが原因とずっと主張しているが、事故はそれ以前にもあった気がしてならない。 「いや、あれはアンモニア水だったし。それも相当希釈してあったんじゃないかな。臭いだけは強烈だったけど、他に何もなかったし。しかも落とした物を拾おうと机の下を覗いたら上から降ってきたんだぞ。安全なんて保障されてないんだよ」  亜塔の言い分は恐ろしい。今ままでよく廃部にならずに続いていたものだ。しかもこのアンモニア情報すら怪しいとは恐ろしい。強烈な臭いだけするアンモニア水なんて存在するだろうか。 「あっ。そういえばあれ、アンモニア水の容器に入れた納豆菌の培養水じゃないか?誰かが実験してたんだよ」  芳樹がどうでもいいことを思い出した。だからどういう実験をしようとしていたんだ。納豆菌を培養しても納豆しか出来ないだろうに。新たな食品の開発でもするつもりだったのだろうか。 「どおりで臭かったわけだ。しかも納豆を直接水で洗って集めたヤツだよな。そこにちゃんと納豆菌が入っているのか謎だったけど。臭いだけは集まっていたか」  亜塔はうんうんと頷いて納得している。そんなところで結論が出ても仕方がない。問題の前進にならないのだ。しかももう色々と突っ込みどころがありすぎで桜太は疲れてきた。 「普通に資料から検討しよう」  力なくそう提案するしかない桜太である。引き下がるわけにはいかず、しかも先輩たちの記憶すら混沌としている。そうなると未分類だろうと資料を頼りにするのが一番だ。 「何か光る状況を示すものを探せばいいだよ」  楓翔も諦めたように紙の束に手を伸ばした。しかし目に飛び込んできたのは数式の嵐だ。まったく理解できない。
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