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さあさあと降りしきる霧雨は夜を一層ぼやりと微睡ませる。
その雨音に紛れ、ぐち、ぐちゅりと下肢から響く卑猥な水音が辰巳の鼓膜を支配した。
激しく責め立てたかと思えば、ゆるゆると入口あたりを焦らすように擦って。
本来濡れるはずのない場所に潤滑油を垂らされ、丹念に解されたソコは、男を受け入れ咥え込み、男の律動に応えてきゅうきゅうと収縮を繰り返す。
「っ、ん、ンンっ、く」
身体の芯を貫く快楽に溺れる自分へ浅ましさを覚えながらも、乗りあがった身体の上、辰巳は自分の指に歯をたて唇を引き結んだ。
雨戸さえ閉めればいいと思っているのか。
しかし蹴破られた障子や巻き込まれた襖は現在も放置されたまま。
密室の情交ではない。
故に、自分の声がもしも邸の誰かに聞かれたら、という至極まともな羞恥に苛まれる辰巳は声を封じようと試みるも、男が手管を緩める気配は微塵もない。
むしろ口を閉ざそうと躍起になる辰巳の姿が癪に障るのか、いつも以上に喘がされている始末。
「んぅっ、ふ、ふぅ…っ、……ッ 、は、なせ…!」
そしてまたも、噛んだ己の指を無理矢理口許から外され、声を抑える術を失う。
唾液が絡む指を捕えた男は、そこにねっとりと舌を這わせてさらに指を湿らせる。
「声を」
人差し指、中指、薬指、小指、と。
目前で這わされる紅い舌。
この舌がいつも自分の身体に這わされているのかと思うと、痕を残された箇所がぞわりぞわりと疼き出す。
辰巳の指を、まるで奉仕するがごとく舐めしゃぶりながら寄越された男の鋭い流し目に、一体どれだけの女が狂わされたことだろう。
「殺すなと、言ったろ」
「──っ ぁ、~~~ッ、ィ!!」
いわゆる前立腺、と呼ばれる男のGスポットを、熱を孕んだ亀頭が容赦なく突き上げる。
そのまま腰を鷲掴んでぐるうりとグラインドさせられ、辰巳の視界に星が飛ぶ。
身の内からぱちりぱちりと爆ぜる感覚が、神経を電子回路として瞬く間に全身へ届き、指の先までぴりぴりと甘く痺れさせた。
女の身体しか知らなかった辰巳にとって、男に女役として喘がされる姦淫はただただ未知で。
しかしキャパシティを遙かに超えて与えられる快感を従順に貪る以外、彼に何ができるというのだろう。
元敵対勢力。捕らわれの身。
拒絶した明くる日にもこの命がまだ続くと、誰が証明できるというのだろう。
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