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湯河原と富田の関係が週刊誌に載ったのは3か月後だった。
富田が湯河原の事務所に日参して、産廃処理場建設支援を要請し、
資金提供を行っているという記事だ。
湯河原は資金の受け取りを認めなかったが、
秘書が受け取って遊興費等に使っているという証拠の写真が掲載された。
掲載されたのは、秘書が頻繁に高級クラブに足を運ぶ姿と、
マンションの賃料や光熱費、食料品代、高級衣料品、温泉の宿泊費などを、
政治資金で支払っていることが分かる帳簿や領収書の写真だ。
そのマンションには、毎週末に湯河原が足を運んでおり、
住んでいる女は秘書の恋人ではなく、湯河原の愛人ではないかという憶測もあった。
それならば、湯河原は政治資金で愛人を囲っていることになる。
金を受け取った場面の写真はなかったが、
高級自動車を買った資金の出所が帳簿からは不明なために、
記者は裏金が車の購入資金に使われたのに違いないと断じた。
世間の人々は、湯河原と秘書の行動は犯罪だと指摘し、
メディアに出回っている写真を撮影して『制裁アプリ』に投稿した。
テレビのニュースをキャプチャーした映像も投稿され、ポイントがついた。
そうして湯河原と秘書が他界するまでの時間は短かった。
真乃IT大学は、もうすぐ夏休みにはいるところだったが、
教授を失った研究室は、プログラムを完成させるために、休暇を検討する時間さえなかった。
毎日、助手と学生は研究室に集まってプログラムの完成を急いでいた。
もっとも、その8割を担うのが善春だったが……
二宮も毎日研究室に顔を出したが、実力から言って戦力外だ。
補助的な作業や、IT関連ニュースを拾い集めて仲間に提供するのが仕事になっていた。
「反則だな。他人が撮影した写真の二次使用でポイントが付くなんて」
二宮は、湯河原を告発した写真を見ていた。
そのほとんどは、写真週刊誌の紙面を撮影したものだ。
告発のコメントは投稿者のものだが、それは告発というより感想に近い。
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