バグ

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二宮の声に、善春は生き返った後、 二重投稿された福袋の写真を思い出して、コードを書く手を止めた。 「バグだと思う」 「バグ?」 「以前からそうだったけれど、『制裁アプリ』の顔認証は写った人を判別するだけで、 写真そのものの同一性のチェックは甘い。 おそらく、手振れや、背景の変化に対応するため、 ファジー機能による制御を緩くしたことが原因だと思う。 バージョンアップされ、抽象的なデータから個人を特定する機能が強化された際、 個人特定においても同様の緩さを導入したのじゃないかな。 だから、二重投稿はあり得るし、 コピーファイルや、コラージュ写真にポイントが付加される可能性もある」 「本当かよ!」 円谷が立ちあがった。 「それじゃ、何でもアリということか?」 「痴漢事件を見てもわかるように、もともと制裁のシステムは、 一つの罪に一つのポイントといった1対1対応ではなかった。 犯罪者の行動が周囲にどんなインパクトを与えたか、 人々がどのように感じたのかを評価している。 そうした意味では、週刊誌の写真やテレビ映像を利用して、 人々が制裁を考えることも想定していると思う」 「マジかよ」 加藤は自分のポイントを確認し、499という数字を見てほっと胸をなでおろした。 「政治家に限らず、マスメディアに取り上げられやすい有名人は、 危機にさらされているということだね。 1億人が投稿したら、1000ポイントなってあっという間だ」 二宮は、目立たない生活をおくろうと決意する。 「二宮はイケメンだし、女にもてるから気をつけろよ」 加藤が二宮の不安を言い当てた。
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