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善春が研究室に顔を出すと、助手らは徹夜をしていて、
みんな眠そうな顔をしていた。
そんな中に二宮も交じっていて、善春の顔を見ると嬉しそうに微笑んだ。
善春は、二宮の顔を見るのは嬉しかったが、
彼がそこにいる理由は分からなかった。
既に、医療ロボットの制御プログラムは二宮の理解できないほど、
複雑で巨大なものになっていたからだ。
「二宮さんは、ここで何をしているんですか?」
善春は余計なことを言わないたちだが、その日は率直に訊いた。
疑問を残していては、仕事に集中でいないからだ。
「失礼な奴だな……」
口ではそう言ったが、二宮の眠そうな顔は笑っている。
「こいつは、一人でいるのが寂しいんだよ」
円谷が背伸びをしながら振り返ると、
二宮は恥ずかしそうな顔で、パソコンに向かう。
「僕が戦力外なのはわかっているけど、
みんなと同じ場所に、足跡を残したいじゃないですか」
髪をくしゃくしゃと掻きながら、視線を落とす。
「あっ、政府は、密かに『制裁アプリ』を削除しようとしたようですね。
昨日から、3人のエンジニアが削除に失敗して死んだようです」
二宮が見ていたのは、IT技術者たちの交流サイトだ。
九十九らの死は公的なニュースには乗らなかったが、
IT技術者たちの間では評判になっていた。
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