制裁アプリ防衛委員会

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世界各国の政府が、『制裁アプリ』の排除に向かって動いた。 日本では、自衛隊に置かれたサイバー防衛隊の下に、 『制裁アプリ防衛委員会』が設置され、 警視庁公安部のサイバー攻撃特別捜査課のほか、 民間の情報セキュリティー企業3社が加わった。 『制裁アプリ防衛委員会』は、H市H駅前のHANAシティビル内に置かれた。 そこなら建物内に十分な空きがあるうえに、ビル内にホテルやコンビニ、娯楽施設も入っていて、 関係者がビルを出ることなく、業務に専念できるからだ。 体のいい、軟禁である。 委員会のトップには、 ギョロ目と温厚な人柄で評判のサイバー防衛隊の山本一二三(ひふみ)海自1佐が座り、 技術的な面では、IT企業のマイクロ・サイバー・ビジネス社、 通称MSBのシステム開発責任者である藤堂大輔がリーダーに任命された。 各組織から選抜された総数120名のエンジニアが集まった委員会の様子は壮観だ。 山本は、エンジニアを10の班に分け、 班長に権限を与えて、思いつくままに解析をさせた。 様々な視点から検討が進むように、各班は組織をまたいだ混成チームになっているが、 実質は、各担当者の組織に対する所属意識が強く、 班内では、協力より反目が目立っていた。 多くのエンジニアは、『制裁アプリ』が公開されたスマホアプリの裏サイトから開発者を探し出し、 容易にプログラムコードを手に入れることができると考えていたが、 裏サイトへの痕跡は完璧に消されていて、 調査の網にかかるのはコピーを拡散させた者たちだけだった。
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