37人が本棚に入れています
本棚に追加
エンジニアたちは自分が解析しているプログラムの同じ場所を開き、
大型モニターに映った智頭のコードと比較する。
「確かに、違うぞ」
会議室のあちこちで声があった。
エンジニアは、隣の席のモニターを覗きこみ、
「こっちも違う」
……と、声を上げた。
藤堂は走るようにして会場内にならんだモニターを見て回る。
「ちがうな」
藤堂は、つぶやくと、全てが解決したとでもいうように座り込んだ。
「どういうことでしょう。同じ圧縮ファイルをコピーして解凍したのに……」
稲田は、隣の阿倍に顔を寄せて聞いた。
「自分が知るか」
阿倍は怒ったように言い返す。
その怒りは稲田に対するものではなく、
順調に歩んできた自分の出世街道を封じた『制裁アプリ』に対するものだ。
山本の前で、こんな事件に関わることがなければ、
近いうちにサイバー防衛隊の隊長の地位につけるつもりだったのだが、
思わぬところでボロが出た。
これで出世が2年は遅れる、と思った。
「コピー順、或いは、解凍時間。ランダムなのかもしれないが、
端末に展開するコードが変わるようになっているのだろう。
そのファイルは単独で動いているのではないということだ」
「ネットワーク型ウイルスね」
葵が青い目を光らせた。
最初のコメントを投稿しよう!