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大きなリボンを揺らして葵が立ち上がる。
「断片コードの解析だけど……、
アプリとデータは光と影。
影を追えば光が見つかるはず」
「なんだ。変な格好をしていると思ったら、今度は、禅問答か」
「シッ……聞こえますよ」
佳織が阿倍を制した。
「馬鹿なおじさん。
データの動きを追ったら、経由するサーバーやスマホが分かるよね。
経由した端末のコードが繋がり、『制裁アプリ』の全貌が見えるわ」
「データが経由したスマホが分かっても、
隠れたコードは分からないだろう。
どうやって解析するんだ?」
馬鹿にされ、頭に来ていた阿倍が声を上げる。
「持ち主に頼めとでもいうのか?」
クスクスと笑いが起きた。
「ハッキング……だよ」
無機質な会議室内で、葵の頭の上で揺れる大きなリボンが生きているように動いた。
「おいおい。俺たちは自衛隊のサイバー防衛隊だ。
海外からのハッキングを阻止するのが任務だ。
自らハッキングを、しかも日本人のスマホに、ハッキングを仕掛けられるか」
「経由するのは、日本人のスマホとは限らないよ」
葵はピンク色の唇を丸くとがらせる。
「ふむ……」
藤堂は顎に拳を当てて考えた。
「海外のアプリも経由していると考えているのか?」
佳織がカリカリと音を立てた。爪で机やテーブルをひっかくのが、考える時の癖だった。
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