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「葵君の言う通りかもしれないな。
6から10班。オープンネットワークの中で走っているデータを拾って、
どこの端末とサーバーを経由しているのか経路を追っててください。
とりあえず、端末の所有者を確認するところまでで、コードの解析はその後です。
データの追跡に際して、嘘のダミーデータは流さないこと。
自分のポイントが増えるだけです。
まだ、皆さんに死なれては困ります。
流すデータは、班内で罪を出し合い、ポイントが相殺できるように相互に情報提供してください」
林の中をつむじ風が走るように、会場内がざわついた。
それを見た、山本が右手を上げる。
「静粛にしてください」
滅多に口を開かないトップの言葉に、会議室に静寂が訪れた。
「自分の罪をさらけ出すのは恥ずかしいことかもしれません。
ましてや多くのメンバーが公務員です。僅かな過ちも許されないと考えるのが当然です。
ですが、仕事でミスをしたとか、ちょっとした隠し事をしているとか……、
そんなことがあるでしょう。
今は、自分の恥を隠すことよりも、国家、国民の命を守ることが重要です。
どうしても班内でネタがなかったら、私のところに来てください。
ゴルフで打数を間違ったとか、空振りをごまかしたとか、
ネタは用意しておきます」
山本がにっと笑みを浮かべると、エンジニアの中から緊張が消えた。
「1から5班はこれまで通り、コード側からのアプローチをお願いします。
他にも隠しコードがある可能性が高い。
徹底的につぶしてください」
藤堂の決断は早く、指示は的確だった。
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