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美しく編み上げられた金色の髪、
スッと天に向かって伸びた細い鼻、
愛を含んだようなオレンジ色の唇、
露出したすべすべの白い肌、
ラベンダー色のドレスに隠された豊かな胸。
ただ、瞳だけは落ち込んだ場所にあって見えなかった。
美女は、善春の持たないものをすべて持っている。
胸が熱くなる。男のような姿を捨てて、美女になり代わりたかった。
「ヌシは、金で金を生んだ。
金が金を生んで生きていけるのなら、だれも汗水たらして働くわけがない。
それとも、なに……
ヌシは金を食える?」
166番のサーラメーヤの声に、
美女は金融業界にいたのだろうと、善春は想像した。
「交換手段のはずだった金を、目的にしてしまったからいけないのよ。
幻の中で、ヌシは金銭欲に侵され、富の快楽に汚染された」
ああ……彼女は地獄行きだ……そう思った。
「ヌシは、豊かさと、美しさと、狡猾さを、
妬まれ、恨まれ、恐れられて、
『制裁アプリ』の餌食になったのですよ」
その時、金髪美女が何を考えているのか……
善春は知りたかったが、知る術はない。
「お待たせしました」
サーラメーヤが戻ってきて、目の前に座った。
それが165番のサーラメーヤだと分かる目印はなかった。
目の前に座ったから、165番だと考えただけだ。
166番のサーラメーヤが、手段を目的化したと言ったことが頭をよぎった。
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