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「さて、どこまで審査したかな?」
「……」
自分で考えろ、と心の内で毒づき笑う。
「ヌシは私を笑ったように、隣の中年男を笑ったね。
それに、復讐心に燃えている。
隣の美女に嫉妬したね。
美しさが欲しいと思った。
自分を否定した」
サーラメーヤは、善春の瞳を覗きこんだ。
「図星だろう。瞳孔が収縮しましたよ。
やっぱり、地獄行きですかね……」
「いやっ!」
反射的に応えた。
「第一、死ぬのがおかしいのよ。
事故にあったわけじゃない。
大病を患ったわけでもない。
誰かに刺されたわけでもない。
それなのに死ぬなんて……
ボクは、二十歳だよ。ハ・タ・チ……
まだ若いんだ。
美味しいものも食べたいし、恋だってしたい」
哀しかったが、涙はこぼれなかった。
肉体がないからだと思った。
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