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「さてさて、困りましたね……」
サーラメーヤが立ち上がり、
「付いてきなさい」
と、歩き出した。
サーラメーヤの身長は善春の肩ほどまでしかなく、
階段を上る時でも、その頭が善春より高くなることはなかった。
階段の先に何があるのか、善春には分かっている。
その先には、閻魔大王しかいないからだ。
閻魔大王の前に立つと、善春の背丈は膝ほどまでしかなかった。
とても見上げる勇気は起きない。
膝が震える。
それは、脚を伝わって胃袋を締め付け、目の焦点を狂わせた。
「座れ」
その声は、善春の父親の声に似ていた。
閻魔大王の前に石の椅子が2脚あって、
一つにはサーラメーヤが、もう一つには善春が座る。
そうすると膝の震えは止まり、冷静さが戻った。
「汝か、死を受け入れないというのは?」
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